LOCAL REPUBLIC AWARD 2020 結果

最優秀賞

ここにしか無い日常の風景を未来に繋ぐ ~都市における経済優先から地域文化価値優先へ〜

  • 株式会社向こう三軒両隣/永瀬賢三・牛山友広・渡部健・藤井克昌・高橋正典

優秀賞

農・本・人を地域経済でつむぐDIYによる点的拠点群

  • 奈良山園/野崎林太郎
  • IN STUDIO/小笹泉・奥村直子
  • 上田真理
  • 家入杏

下北沢の街並みを引き継ぐ職住一体、新築の商店街

  • ツバメアーキテクツ/千葉元生・西川日満里・山道拓人
  • 小田急電鉄
  • 散歩社/内沼 晋太郎・小野 裕之

商業に依存しない「職住商」混在による拠点整備の実践

  • 冨田浩志
  • 株式会社リトルデザイン/佐藤あさみ
  • 株式会社オブザボックス/追沼翼
  • 株式会社デイアンド/追沼翼・北嶋孝祐

特別賞

流動する狩猟採集的共同体の家

  • 西脇 英里雄・塩浦 一彗・村上 大陸

1000年続く小さな町で、泊まり、関わり、地域と来訪者をつなぐ小さな経済圏を目指して

  • UMA/design farm/原田祐馬・西野亮介・髙橋めぐみ
  • dot architects/家成俊勝・土井亘・寺田英史
  • アトリエ縁/清水徹
  • 加藤正基
  • 一般社団法人弥禮

佳作

小さなクリエイティブが集まる地域の新たな拠点づくり

  • 株式会社OSTR/太田翔・武井良祐

寺町・大田区池上でゆるやかな変化を起こすカフェ/マルチユースインフォメーションセンター

  • SANDO BY WEMON PROJECTS/小田桐 奨・中嶋 哲矢・敷浪 一哉
  • 大田区/大黒 洋平
  • 東急株式会社/大森 文彦

熊野と近畿の交流 障がいや不登校、ひきこもりなど”困り感”を抱える若者を支援する場をつくる

  • 多田正治アトリエ/多田正治
  • NPO法人ぷろぼのくまの/柴田哲哉

花水木通りを引き込み、店舗、シェアスペースを併設した4住戸の長屋

  • dot studio 一級建築士事務所/沼俊之・上野宏岳・増山武

リアルとオンラインでつながる

  • 株式会社Little Japan/柚木理雄・青蜂ユキ
  • Soft. Guest house/大塚誠也
  • ヤドカリ夫婦・アトリエヤドカリノアソビ/横山北斗・横山遊
  • ステラエックス株式会社/平井威充
  • 屋久島サウスビレッジ・屋久島ユースホステル/阪根充
  • 株式会社富士通研究所/角岡幹篤・小高敏裕・原田美香・古田拓也・関口敦二・大嶽智
  • 裕・田中ユカ・稲垣貴大

地域の担い手が育つまち

  • 永田 賢一郎/YONG architecture studio

講評

山本理顕

「LOCUL REPUBLIC AWARD」も第三回を迎えて、その主旨がより明らかになってきているように思います。「LOCAL REPUBLIC」の実践の現場から私たちが教えられています。「LOCAL REPUBLIC」とは住人自治によるコミュニティーの再生です。こんなにも多くの人たちが、真剣にコミュニティーの再生に取り組んでいることに心を打たれました。戦後日本の住宅政策は「一つの家族」を大切にする政策ではあっても、コミュニティーをつくることに関しては決して熱心ではありませんでした。コミュニティーは、むしろ「一つの家族」の平穏を乱す攪乱要素だと考えられてきたのです。「一つの家族」は「一つの住宅」に住むべきである。その家族のプライバシーを守り、その内側の幸福を最大化する、それが「1住宅=1家族」政策です。家族の側から見れば、その結果、彼らは住宅の中に閉じ込められてしまったと言えます。ですから「1住宅=1家族」に住む人びとは、その外側に対する意識が希薄になりがちなのです。
最早人びとはコミュニティーなど求めていない、などという分析をしてくれる社会学者もいますが、でも、その分析が既に「1住宅=1家族」政策を追認し、それを前提にした分析なのです。
日本は今、震災、集中豪雨、原発事故、コロナ禍、弱者に対するテロなどを含めて、人災天災両方向から災害に脆弱な国になってしまっています。それはコミュニティーの弱体化と深く関わっていると思います。今の日本では、コミュニティーの再生は死活的問題なのです。コミュニティーの再生という意味は、一つの地域に共に生活する人びとがお互いに助け合うような仕組みをどうしたらつくることができるか、その仕組みを作ることだと思います。そしてその仕組みを持続性のある仕組みにするためにはそれ自身が経済的な基盤を持っていなくてはなりません。
今回の「LOCUL REPUBLIC AWARD」で最優秀賞を勝ち取った「向こう三軒両隣〈既存商店街機能×宿場町文化〉」の提案は正にそのような提案でした。

最優秀賞

<向こう三軒両隣〈既存商店街機能×宿場町文化〉>

板橋の仲宿商店街でカフェを経営していた永瀬さんは、近くの銭湯「花の湯」が解体撤去されるのを間近に見て、危機感を感じたという。仲宿商店街は中山道の宿場町であった。日本橋を出て、第一番目の宿場町である。その宿場町の伝統は未だに残っていて、今でも強いコミュニティー意識を共有しているという。
永瀬さんは商店街に面して「カフェ×コワーキングスペース(おとなりstand & works)」をつくった。それを中心としてまちづくり協議会を発足させ、「向こう三軒両隣」という株式会社をつくったのだという。その会社で近くの「板五米店」という蔵造りのお米屋さんの改修を引き受けて「板五米店再生プロジェクト」を立ち上げ、クラウドファンディングを実行して370万円を集める。凄まじい行動力だ。そしてその「板五米店」の店構えは十分に美しい。さらにある。電力売電会社を設立して、仲宿商店街の人たちから電気代を集めてその収益を地域社会の人びとに還元するという手法をあみだしたのだ。
審査員一同「すごい!」と思った。あっという間に全員一致で最優秀賞になった。 すごいと思ったのは、自分たちのするべきことを自分たちで決めて、自分たちの責任においてそれを実行するという、その責任感である。私たちには自分たちのするべきことを自分たちで決める権利がある。それを自治権という。コミュニティーというのは自治に対する責任感のことなのだ。それが、永瀬さんたちが私たちに教えてくれたことである。
(文:山本理顕)

優秀賞

<東久留米タルキプロジェクト>

共和政ローマ末期の政治家、哲学者であるキケロは「庭と図書館さえあれば、人生に必要なものはない」という言葉を残した。「タルキプロジェクト」はまさに、地域社会を育むために必要な「庭園と本」を地元に提供している。
DIYで自ら手を動かし、垂木を使うというアイデアで、低予算でも地域をつなぐ場を実現させた。その場を中心に、自治的な経済活動「ローカルエコノミー」が生まれている。
地元の種から地元の食べ物が生まれ、地域住民がつながり、多くの人々に笑顔をもたらした。そして、庭園には新たな種がまかれ、次世代へつながる資源や生物多様性がどんどん増えていくだろう。
庭でくつろぎ、地元でできた食を楽しみながら、本を読み、友と語らう。こうした本当の人生の豊かさを、東京で実現していることは、賞賛すべきであろう。
(文:ジョン・ムーア)

優秀賞

<BONUS TRACK>

「人間のための都市計画」で知られるクルチバの元市長が訪ねて絶賛したことのある下北沢。国際的にも評価の高いこの街が、道路貫通、小田急の地下化などの開発とともに、狭い街路、路地が入り組むなかに独特の賑わいを生んでいた本来の魅力を失うのではという心配があった。だが、「BONUS TRACK」は、鉄道の地下化に伴って地上に生まれた空地に、その懸念を吹き飛ばすような、下北沢の近未来を切り開く素敵な場所を生み出した。
この計画は拘束条件のない白紙としての空地が対象だけに、難しさが伴う。下北沢の魅力を継承・発展させるべく、周到なリサーチからスタートし、2つのことが重視された。先ずは、小商いの店を意欲的に集めること。しかも小規模店舗の上には住宅を置いて職住一体を目指す。次に、既存の街の街路を生き生きとさせているヴァナキュラーな建築要素をサーヴェイし、それをここに導入して界隈性を再現させた。実際に現地を訪ねると、どこか南イタリアの集落をも思わすような実に居心地のいい路地的広場に魅せられる。思い思いに置かれたテーブル、椅子に人々が楽しげに集い、従来の下北沢に欠けていたコモンの空間の可能性を見せている。小田急電鉄という大企業に新時代の小さなスケールの丁寧な空間づくりを実現させたツバメアーキテクツの気鋭の建築家達の力量を高く評価したい。
(文:陣内秀信)

優秀賞

<すずらん通りリノベーションプロジェクト>

すずらん通りリノベーション・プロジェクト」はとても地味な提案に見えた。応募のフォーマットがA3横一枚というものなのだが、プレゼンテーションを大きく失敗している。応募資料からは、山形駅近くにある防火建築帯の一角をリノベーションした小さなコーヒースタンドの提案でしかないように見える。そのため一次審査ではボーダーだったのだが、審査資料に描いてあるダイアグラムや小さな写真を見ていると、5年前から始まっている小さな商業プロジェクトがネットワークされ、次第に地域を再生する運動になっているように読み取れた。そして、提案の中心としている地味なコーヒースタンドが、この地域再生ネットワークのハブとなっており、同時に地域社会とのインターフェースになっていることが主張されているようにも読めた。そこで、遠方ではあるが、是非公開審査の会場に来てもらおうということになった。そして、来てもらって大成功だった。時系列を追って説明されるプロジェクトは大変な迫力を持っていた。それは商業活動をプロジェクトの核としながら「商業に依存しない職住商混在による拠点整備の実践」となっていた。素晴らしい提案であった。祝福したい。
(文:北山恒)

特別賞

<SAMPO PLAYHOUSE>

「建築集団SAMPO」の拠点が「SAMPO PLAYHOUSE」である。彼らが住むためのシェアハウスであると同時に、地域住人、来訪者が団欒をとる場所であり、さらに東日暮里地域の空き倉庫や近隣施設で「衣・食・音・住」に関わるイベントやマルシェを開く時のバックアップとして使われているという。時にはディスコとしても使われ、ミュージシャンの活動拠点にもなる。
まだある。この活動の一環として、「モバイルセル」なる軽自動車ハウスを考案した。どこにでも行く。雑貨の販売をすることもできるし、寝室にもなる。様々な場所にでかけていってその地域のコミュニティーに寄生する。お邪魔虫のようでもあるし、コミュニティー培養器のようでもある。猛烈な勢いがある。地域のお祭りに屋台や香具師が欠かせないように、「地域社会圏」にはこのような人が必要なのだ。
(文:山本理顕)

特別賞

<日貫一日プロジェクト>

1000年続く山間の村で、来訪者と地域の人によって生み出される小さな経済圏の提案。点在する空き家をフロントと宿へと改修し、集落を巡りつつ、暮らすように滞在できる。山や空、日常風景を切り取る美しいプレゼンテーションから、当たり前のように感じられるまちの風景の中に素晴らしさがあるのだということを、目に見えるかたちにしていくことこそが、これからのまちづくりに必要なのだと感じさせられた。高齢化や過疎化が進む中、外から訪れる建築家やクリエイターと地域の人々が力と知恵を出し合い、協力して共にまちの未来を考える一つの事例として評価された。今後さらにプロジェクトが増え、活動がつながり広がっていくことが期待される。
(文:大西麻貴)

佳作

<本庄西の現場>

2棟並んだ長屋を合築し、半分をシェアオフィス、半分を作業やイベントの実験場として使い始めたプロジェクト。既存のフレームの内側に沿わせた耐震補強の軸組、隣地とのあいだに架けられた透明樹脂の波板による下屋、構造補強された床スラブと人と設備配管のとおりみちである砂利敷きの対比、がそれぞれ美しく、その様子が路地から元々は便所のくみ取り用に設けられた通路をとおしてうかがえる。同じ設計者・所有者によるビルのリノベーションの計画が進んでいて、今後はまちとしてのひろがりが期待される。

佳作

<SANDO BY WEMON PROJECTS>

東京都大田区の池上本門寺の参道である池上エリアに、まちづくり拠点としてカフェ兼マルチユースインフォメーションセンターを2019年にオープン。大きなコの字型カウンターを中心としたこの場所は、近隣商店街とも提携しながらじっくりと街への浸透を目指している。まだまだ小さな取り組みながら、大田区と東急の公民連携まちづくり協定に基づく実践活動であり、大企業が草の根的なまちづくりへと関わっていくモデルとして今後の展開が期待された。

佳作

<くまの就労支援センター ヨリドコ>

商店街につながる「エンガワ」と開放的な「ヨジョウハン」、その奥に軽く身体を動かすための場所を持つ就労支援施設である。「エンガワ」「ヨジョウハン」は通りゆく人が立ち寄れる場所であり、イベントや店舗として使うことができる。敬遠されがちな施設がまちに受け入れられ、資金の地元企業からの寄付と就労という交換、熊野のエリアで継続的に活動を続ける建築主・建築家と工務店のネットワークなど、いくつもの連携が重なっている。その活動自体がこれから商店街の空間に現れてくることが楽しみなプロジェクトである。

佳作

<花水木ノ庭>

富山市中心部のやや寂しい商店街が舞台である。よく見てみると、いくつかの個性的なお店が頑張っている。設計者は、それらのお店どうしが交流できるような拠点として、集合住宅でありながら、「屋根付き広場」として機能する建築をつくりだした。広場に面して店舗、住宅、シェアスペースが配置され、さまざまな関係性をつくることができる。外階段を上れば空に開けたテラスも活用できる。奥に長い敷地の特性を活かして、しっかりとした空間骨格をもつことが評価された。

佳作

<シェア街>

浅草橋周辺の5軒のシェアハウス・ゲストハウスの“住民”が、「自転車で移動できる距離」で街の内外との人達とつながっている。そこにコロナ禍があり、リアルの場に集まることが難しくなった“住民”たちを“関係住民”としてオンラインの場でつなぎなおし、交流を継続、深化させていく試みである。“関係住民”とリアルな街とのつながりが今後発展し、“シェア街”が場所性を獲得していくことが期待される。

佳作

<藤棚/野毛山ミーティング>

どこにでもありそうで、どこにもない場所を生み出した意義あるプロジェクトである。建築家自らが住人となり、生業(なりわい)としての「街を生かす役割」を担った自叙伝的な営みの歴史でもある。実現した各所はみな既成の名前のつけられない場所を生み出している。これは街の活性化を処方する町医者のような、新たな建築家のスタンスであろう。これから紡ぎ出される、さらなる面的な街の在り方を、数年後また見られる事が期待される。

公開最終審査会概要
日時:2020年11月7日(土)13:00〜18:30
会場:寺田倉庫 G3-6F
審査形式:一次審査通過12組のプレゼン・公開審査

公開最終審査会動画:

LOCAL REPUBLIC AWARD 2020シンポジウム

以下の通り、LOCAL REPUBLIC AWARD 2019最優秀賞の舞台である真鶴にてシンポジウムを開催しました。
「美の基準」で知られる真鶴町のまちづくり条例制定を支援された五十嵐敬喜氏を招き、基調講演・パネルディスカッションが行われました。

テーマ:「美の基準」とLOCAL REPUBLIC AWARD
日時:2020年9月27日(日)13:30〜16:00

登壇者(敬称略):
五十嵐敬喜(弁護士・法政大学名誉教授)
LRA2019最優秀賞受賞者/川口瞬・來住友美(真鶴出版)、
冨永美保(トミトアーキテクチャ)・伊藤孝仁(AMP/PAM、元トミトアーキテクチャ)
LRA2020審査員/山本理顕、北山恒、陣内秀信、ジョン・ムーア、大西麻貴

内容:
第一部
審査委員長(山本理顕)挨拶
LOCAL REPUBLIC AWARDとは
基調講演(五十嵐敬喜)

第二部
LRA2019最優秀賞受賞者プレゼンテーション
パネルディスカッション

シンポジウム動画: