そこに住む人びとがお互いに助け合う、そのような住み方ができないだろうか。それが可能だとしたら、従来までの一つの住宅に一つの家族という住み方とは決定的に異なるはずである。「1住宅 =1家族」の形では、家族の内側の幸福や家族のプライバシーを大切にすることはできるが、いくつもの住宅が集まってお互いに助けあうようなコミュニティーをつくることは極めて難しい。
私たちは「1住宅=1家族」に代わる新たな住み方を提案してほしいと切に願っている。そして今回、既に実現している人たちを探したいという想いでこのAWARDを開催するに至った。AWARDを通じ、「1住宅=1家族」の内側の幸福だけを求めるのではなくて、隣人や更にその隣人に対しても心遣いをするような住み方を提唱して頂きたい。
それは住居だけに限らない。たとえば、エネルギーの生産システムと消費のシステムとを見直すことかも知れない。遠いプラントから送られる電気エネルギーではなく、地域固有の生産方法と効率的な消費システムによって、エネルギーの地産地消が実現される。あるいはゴミ。ゴミを資源と考えれば、コンポストで肥料、バイオガスをつくることもできる。エコシステムは使う人の意識を変えて行き、やがて地域ぐるみの活動を誘発するはずだ。 あるいは経済。「1住宅=1家族」は単なる消費の単位でしかないが、たとえばお店をつくることは自分たちの利潤のためだけではなく、周辺地域社会の生活に貢献し、その住宅地を小さな経済圏にすることができる。農業も同様に、生産、加工、販売を地域ぐるみで実施するいわゆる六次産業化や、農業活動自体が地域一帯の景観保護にもなり得る。
既にそのような試みを始めている人たちは実際にいるのだと思う。是非、応援したい。
それこそが「LOCAL REPUBRIC AWARD」の主旨である。

審査委員長山本理顕

LOCAL REPUBLIC AWARDが始まります。
近代以前の社会においては、目の届く範囲、手の届く範囲で相互に助け合う事が当たり前でした。主旨文にあるような、自分や家族のためだけではなく地域と共存できる住み方は、私たちの本来あるべき姿ではないでしょうか。
グローバルやマスの台頭により現代社会で失われつつある「LOCAL REPUBLIC」の概念を持ち、未来に向けて勇気と理想を持って活動しているプロジェクトを応援致します。
是非このAWARDに応募して、次世代の「新たな住み方」の先導役になって欲しいと切に願います。

LOCAL REPUBLIC AWARD
実行委員
実行委員長田井幹夫
実行委員蜂屋景二・日野雅司・
仲俊治・竹井淳平

最終公開審査会結果のお知らせ

<受賞プロジェクト> (五十音順)

最優秀賞

鹿沼市旧市街の「祭り衆」による自治組織と「シゴト」を通じた連携がつくるローカル商店街

  • 建築設計室わたなべ / 渡邉貴明
  • 日光珈琲 / 風間教司
  • 小山工業高等専門学校建築学科助教 / 永峰麻衣子

優秀賞

地域拠点型シェアハウスの経済活動により、一帯に”他者との出会い”を提供する取り組み

  • トミトアーキテクチャ/冨永美保+伊藤孝仁
  • カサコプロジェクト

地域内共同のものづくり形成による経済圏と、里山の生活風景の再構築を試みるプロジェクト

  • 歓藍社 / 佐藤研吾、渡辺未来、河原伸彦

入賞

歴史と文化と自然と共生する住宅型複合施設による、価値交換および共創空間提供の試み

  • 荒井聖輝、石田卓也、新保卓己

建物改修による、個々の有機的な繋がりと一帯の経済的自立をもたらす地域開発プロジェクト

  • 望月陽子(代表者)、新井久敏、蔵kura、
  • 子鹿手袋マルクト、鹿手袋の長屋住人、ASA / 鈴木 啓、
  • 橋本 純、生物建築舎 /藤野高志、Maniackers Design

施設開発と福祉ネットワークの形成により、島の生活圏、経済圏を再構築するプロジェクト

  • 豊島の福祉を考える協議会
  • 安部良アトリエ一級建築士事務所 / 安部良

農業特化の滞在型観光の育成による地域コミュニティの活性化プロジェクト

  • 伊澤いちご園 伊澤 敦彦
  • アトリエ慶野正司 慶野 正司
  • 小山工業専門学校建築学科助教 永峰 麻衣子

佳作

里山循環型住居を中心に生活・文化・環境保護・経済活動が展開される取り組み

  • 中村将之、築山大祐、福本遼

エネルギーの地産地消、およびアート事業による地域の文化的発展を推進する取り組み

  • 松下康平、株式会社ZEエナジー、株式会社アースプラスデザイン

人と生業にフォーカスした、深川に住む人々の新旧交えたコミュニティ作り

  • 久保田啓斗、時田海斗、藤田彩加

街に開かれた老人ホーム改修を通じ、住民と高齢者の安心と地域共生を実現する取り組み

  • teco / 金野千恵、アリソン理恵、 (福)愛川舜寿会 / 馬場拓也

敷居を解放して公私の境を曖昧にすることで、近隣との連続的空間を共有する平屋木造団地

  • studio velocity / 栗原健太郎・岩月美穂

<最終公開審査会>

日時: 5月13日(日)13:00-
場所: 寺田倉庫本社2F「Terratoria」
〒140-0002 東京都品川区東品川2丁目6−10 google map

審査形式:

  • ・一次審査通過7組のプレゼンと質疑応答
  • ・審査員&プロジェクト代表者による公開ディスカッション
  • ・審査員の公開審査による結果発表

公開シンポジウムレポート

「LOCAL REPUBLIC AWARD」公開シンポジウムが2018年3月25日、寺田倉庫本社内の「テラトリア」で行われた。審査員を務める山本理顕氏、北山恒氏、陣内秀信氏、ジョン・ムーア氏がパネリストとして登壇し、「LOCAL REPUBLIC」に関する発表とディスカッションが行われた。

最初に登壇した山本理顕氏は「LOCAL REPUBLIC」の命名者であり、その言葉の由来を解説した。フランスの政治思想家アレクシ・ド・トクヴィルが著書「アメリカのデモクラシー」の中で言及している、ニューイングランドの「タウン」こそ「LOCAL REPUBLIC」である。「タウン」とはトクヴィルがアメリカ訪問で発見した共同体のあり方であり、市民全てが、社会的な意志決定に参加するシステムである。
また山本氏はハンナ・アレントの著作から、アメリカ大統領トマス・ジェファーソンが市民が直接参加する行政区「ward」を基盤とした民主制を理想としていたことについても言及した。今日において「REPUBLIC」という言葉は「共和国」と訳されているが、ジェファーソンの言う「REPUBLIC」とは「ward」のことを指している。「ward」は一つの経済圏であり、自分達の生活を自分達で決める社会である。

次に登壇した北山恒氏は、日本と世界の人口動態について解説を行った。人口が急増した産業革命以降、都市化・超資本主義化により「個人・共同体・自然」の関係が分離している問題を指摘した。その「個人・共同体・自然」を再び結びつけることが、「LOCAL REPUBLIC」の理念であると述べた。また北山氏は、自身が関わる木造密集市街地の安全性・居住性を改善する研究や、門前仲町に設計した「HYPER MIX」を「LOCAL REPUBLIC」の実践例として紹介した。

陣内秀信氏は、多くのフィールドワークによって得られた国内外の様々な「LOCAL REPUBLIC」を体現する例を紹介した。イタリアのアマルフィでは、住民が家だけでなく町全体を生活の場として、魅力的な暮らしを送っている。それは建築と広場が一体となって、日常と非日常が同時に存在する町である。ミラノ郊外のナヴィリオ地区は、運河沿いの町工場を商工住が混在する建築へとリノベーションし、今では多くのデザイナーが住む魅力的な地域になっている。またイタリアにはヴィチナートと呼ばれる、複数の住宅が集まってつくる広場があり、洞窟住居のマテーラやプロチダ島の漁師町などをヴィチナートの例として紹介した。海外だけでなく、日本でも清澄白河の商店街の取り組みや、外堀のカナルカフェなど、都市に住み、町とつながる住まい方が始まっていることを述べた。

4人目の登壇者であるジョン・ムーア氏は、便利さを追求し、人間のためだけに作られた社会に対し疑問を呈した。地域によって食文化や食材の味覚が違うのは、そこで育まれた種や土壌、微生物など、見えない生き物たちの営みがあることを表している。人間だけではなく、地域の生態系を含めてすべての生命を育むことが本当のコミュニティーであると説く。そのためにも、非集中型のローカル・エコノミー・ネットワーク型経済を作り、地域での循環型ライフスタイルを目指すべきであると主張した。

登壇者4人に加えて、審査員の吉良森子氏がビデオメッセージによりプレゼンテーションを行った。オランダでの設計活動を通して、新しい自治のあり方を実感していることを延べ、クロースターブールンの事例を紹介した。そこでは集落の中心的な施設であった老人ホームを、経営者が撤退することをきっかけとして、市民が自分達で運営に乗り出している。また続いて、実行委員の仲俊治氏が設計した「食堂付きアパート」も、小さな経済を基盤としたコミュニティを成立させる集合住宅として、紹介された。

後半はパネリスト達によるディスカッションが行われた。論点は多岐にわたったが、主にコミュニティにおける「経済」と「法律」に関する議論が交わされた。
かつてコミュニティには独自の経済活動があり、イタリアや大阪などの自治の精神が旺盛な都市には、自らが経営者である住人が多く存在している。これからの「LOCAL REPUBLIC」にも、独自のLOCALな経済活動が存在していることが考えられ、すでに水力発電などのインフラシステムを中心としたコミュニティの事例などが現れてきていることが話された。
LOCALな経済活動の中では価値を金銭で買うのではなく、価値を交換する「シェア」や「共有化」が資本主義の概念を変えていくのではないか、という意見も話された。
また、コミュニティにはLOCALな規範が存在していたように、「LOCAL REPUBLIC」にも新しい法律が必要なのではないか、という議論も行われた。何を共有して生きてゆくのか、というPUBLICとPLIVATEの定義を上から与えられるのではなく、自分達で決定していく「社会法律」という考え方の重要性が話された。
その後、会場からの質問を受け、ソマリアのクラン(氏族)や大家族が「LOCAL REPUBLIC」と呼べるかなど、より視野の広い議論が展開し、シンポジウムは終了した。

審査員

<審査員紹介> 2018.1-3月時点

山本理顕(審査委員長)

建築家・4月より名古屋造形大学学長。
初期の住宅から住居の集合形式を主題にした建築作品で、
日本の建築界をリードする。
Y-GSAでは”地域社会圏”をテーマにしたスタジオ教育を行い、
『地域社会圏モデル』『地域社会圏主義』等の著書により
コミュニティ機能をもつ現代都市を提唱する。

北山恒

建築家、法政大学教授、横浜国立大学名誉教授。
日本建築学会作品賞、ARCASIA 建築賞ゴールドメダルなど数々の実績に加え、
横浜市都心臨海部・ インナーハーバー整備構想、横浜駅地区大改造計画への
参画など街づくりにも精通する。

陣内秀信

建築史家・法政大学デザイン工学部教授。アマルフィ名誉市民。
ヴェネツィアを始めとするイタリアからイスラム圏を含む地中海世界、
江戸・東京の建築・都市空間を調査・研究。
『東京の空間人類学』を代表に数多くの著書、講演・テレビ出演を通じて
都市の魅力を伝える。

吉良森子

建築家、神戸芸術工科大学環境建築学科客員教授。
アムステルダムを拠点に建築設計、歴史的建造物修復、リノベーションを手掛ける。
国内のみならず、オランダ文部省ローマ賞基本賞など海外にも数々の実績を持つ。

ジョン・ムーア

大手広告会社、パタゴニア日本支社長を経て、
各地域に残された原種の種を守る、一般社団法人SEEDS OF LIFEを設立。
自らも農業やガーデンデザインも行いながら、様々な地域で種から持続可能な
農業と新しい経済システムを提案する社会起業家として活動中。

中野善壽

寺田倉庫代表取締役。
一昨年建築倉庫ミュージアムを設立した他、
天王洲アイルの街づくりや文化・芸術の支援育成に取り組むことで知られている。

応募作品

  • ・住宅、商業建築、商店街、街全体など対象物を問わない
  • ・生活圏と経済圏が混在してコミュニティが成り立つ“LOCAL REPUBLIC”を体現するもの

(現に活動しているものを対象とし、イメージ、アイデア段階のものは対象としない)

選考方法

一次審査: 書類選考
最終審査: 上位7組のプレゼンによる審査会

提出資料

A3横一枚(応募フォーム内ストレージにて提出)

日程

2018年

2月1日 募集開始
3月25日 17:00-19:00 シンポジウム
4月27日 23:59 締め切り
4月30日 一次審査
5月13日 13:00-19:00 最終公開審査会

賞金

最優秀賞 ¥2,000,000
優秀賞 ¥200,000 × 2点
入賞 ¥50,000 × 4点

参考書籍

  • ・『地域社会圏主義』(LIXIL出版)
  • ・『地域社会圏モデル』(INAX出版)
  • ・『都市のエージェントはだれなのか』(TOTO出版)
  • ・『モダニズムの臨界:都市と建築のゆくえ』(建築・都市レビュー叢書)
  • ・『これまで と これから ― 建築をさがして』(現代建築家コンセプト・シリーズ)
  • ・『東京の空間人類学』(ちくま学芸文庫)
  • ・『環境貢献都市 東京のリ・デザイン―広域的な環境価値最大化を目指して』

開催

主催: LOCAL REPUBLIC AWARD実行委員会
一般社団法人地域社会圏研究所
協賛: 寺田倉庫

事務局連絡先:
info@localrepublic.jp

開催:
LOCAL REPUBLIC AWARD実行委員会、一般社団法人地域社会圏研究所

協賛:寺田倉庫