主旨
COVID-19は、世界中で、濃密なコミュニティーを媒介にして感染が広がって行った。一方、現在の日本では、毎年のように様々な自然災害にみまわれている。そこでもっとも傷つけられているのはコミュニティーである。そして、その災害から立ち直るのも豊かなコミュニティの力による。いま改めて我々はコミュニティーの力について問いかけられている。コミュニティの力とはお互いに助け合う力である。
「お互いに助け合う」そのような住み方ができないだろうか。もしそんなことが可能だとしたら、「一つの住宅に一つの家族が住む」という従来までの住み方とは決定的に異なる住み方を考案する必要がある。「1住宅=1家族」という住み方は、そこに住む家族のプライバシー、その内側の幸福を大切にするためには良くできた住宅の形式だが、それがいくつも集まってお互いに助け合うようなコミュニティーをつくることはできない。
私たちは「1住宅=1家族」に代わる新たな住み方を提案してほしいと切に願っている。いや、すでにそのような生活の仕方を実現している人たちがいる。勇気を持って行動しているそうした人たちに出会いたいと思う。そしてその勇気を多くの人と分かち合える手伝いをしたいと思う。住むことは単に住宅の内側に住むという意味ではない。地域社会の人々と共に住むという意味である。そのためには、たとえばエネルギーの生産システムと消費のシステムとを見直すことである。遠いプラントから送られる電気エネルギーはなく、地域固有の生産方法と効率的な消費システムによって、エネルギーの地産地消が実現されるはずである。あるいはゴミ、あるいは交通システム、そうしたインフラと一緒に住み方を考えることが、地域社会の人々の助け合いの活動を活性化させるはずである。
そして最も重要なのは経済である。「1住宅=1家族」は単なる消費の単位でしかない。「1住宅=1家族」には経済活動が組み込まれていない。
どんなに小さくてもいいから生業(なりわい)と一緒に住む場所を考える。それは単に利潤のためだけではなく、それだけで地域社会の人々の生活と深く関わるようになるはずである。
前回最優秀賞の「泊まれる出版社・真鶴出版2号店」の活動は、観光客の人々と地元の人々とをつなぐ正にその実践であった。周辺に開かれたこの建築が一つできただけで、真鶴の地形や自然環境やコミュニティーがいかに魅力的か、それが分かる。そして、単なるアパートを職住一体型の住まい方が実現するように造り替えることで、なんでもない駐車場が地域の人々が集まる広場になってしまうという離れ業を演じてくれたのが優秀賞の「欅の音terrace」である。
こうした建築空間は、私たちの未来の住まいのいわばモデルである。こうした人々の活動を応援したい、それが「LOCAL REPUBLIC AWARD」の主旨である。
2021年1月8日
2020年11月7日に寺田倉庫にて公開最終審査会が行われ、最優秀賞以下の受賞者が決定しました。
今年はコロナ禍の影響で無観客、オンライン配信での開催となりましたが、全国各地の素晴らしい取り組みが披露され、「こうした人々の活動を応援したい」というAWARDの主旨を今年も実現することができました。応募者・協賛者はじめ関係者の皆様に御礼申し上げます。
結果、講評、アーカイブ動画を掲載しましたのでご覧ください。